トラックボールに挑戦

SF作家ソンで、環境を見直しているという池澤春菜さんがトラックボールを使っていた。挑戦している人の例に漏れず、春菜さんも熱心にトラックボールの利点を私に訴えてきた。腱鞘炎にならないし膝の上に乗せても使えるし、このタイプなら親指だけなので疲れにくいし――あのお声で、ゴージャスに。 その通り、トラックボールはいいポインティングデバイスだ。 私が初めて所有した近代的OSが動くコンピューターはPowerbook 165cで、ポインティングデバイスはキーボードに埋め込まれたトラックボールだった。Photoshop 2.0もIllustrator 3.1もMini CADも、3Dグラフィックスを体験したStrata Vision 2.0も、そのあと20年間飯を食わせてくれたShadeのIII Lightもそのトラックボールで操作していたからよく知っている。…

taiyolab.com/ja/2025/11/04/%e3

トラックボールに挑戦

SF作家ソンで、環境を見直しているという池澤春菜さんがトラックボールを使っていた。挑戦している人の例に漏れず、春菜さんも熱心にトラックボールの利点を私に訴えてきた。腱鞘炎にならないし膝の上に乗せても使えるし、このタイプなら親指だけなので疲れにくいし――あのお声で、ゴージャスに。 その通り、トラックボールはいいポインティングデバイスだ。 私が初めて所有した近代的OSが動くコンピューターはPowerbook 165cで、ポインティングデバイスはキーボードに埋め込まれたトラックボールだった。Photoshop 2.0もIllustrator 3.1もMini CADも、3Dグラフィックスを体験したStrata Vision 2.0も、そのあと20年間飯を食わせてくれたShadeのIII Lightもそのトラックボールで操作していたからよく知っている。 就職した印刷会社では会社のMacintoshの標準マウスを使っていたけど、退職して初めてフリーランスになった1999年、友人たちとワンルームマンションにオフィスを仕立てた私は、省スペースと効率化のためにケンジントンの多ボタントラックボールを買った。当時はマイクロソフトがホイール付きマウスを普及させようと躍起になっていたが、ホイールの利点を語る人たちに反発してトラックボールを使っていた。ページ移動ならページアップ・ダウンをボタンに割り当てられるトラックボールの方がいいんだ――なんて言っていた。でもホイールは便利だった。一度使ったら手放せない。私もマイクロソフトのホイールマウスを買って、トラックボールを使うのをやめてしまった。 これが20年ぐらい前のこと。会社員になった私はグラフィック制作から遠ざかるにつれてマウスから離れ、ほとんどの作業をトラックパッドで行うようになった。Macbookのマルチタッチトラックパッドは二本指でスクロール、三本指でExposéのようなウインドウ整理が呼び出せるのがいい。引っ越して、大きなディスプレイを繋いで使う時はマウスを使うようになった。 でも、池澤春菜さんが「いいでしょ」と自慢するトラックボールは確かに便利そうだった。エルゴノミクスマウスのフォルムで親指をポインティングに使うトラックボールは確かにいいものだろう。 しかし、左利き用がほとんどないのだ。 左手で使える製品は、左右対称のユニバーサルデザインの大ぶりなボールを人差し指と親指で動かすトラックボールばかり。操作性が悪くないことは知っているんだけど、左右対称のトラックボールには多ボタン製品がほとんどない。トラックパッドやマウスの追加ボタンにアサインしていたExposéを割り当てられない。それでも探すと、一つだけ多ボタントラックボールが見つかった。 エレコム マウス ワイヤレス トラックボール (親指) 左手専用 赤玉 6ボタン チルト機能(左右スクロール) ゲーミンググレード光学センサー採用 ブラック M-XT4DRBK-G デザインは悪くない。Bluetoothではないけど無線なのでレイアウトは自由になる。というわけで早速購入した。Amazonでは5,000円しないけど元は10,000円クラスの製品なので材質は悪くなかった。 多ボタンのクリックはUSBの標準的なHIDではなかったのはちょっと残念。Kalabinaer Elementsが使えない。仕方がないので、Elecomのアプリでボタンを設定。行く・戻るをExposéとアプリExposéに割り当てた。 次に変更したのは水平スクロール。ホイールを傾けるチルトホイールは一定の速度でしか動かないし、Shiftキーとホイールを併用するやり方にも慣れているので、ホイールを倒す操作は、デスクトップの左右移動(仮想画面の切り替え)に割り当てることにした。この時カーソルキーで移動するときのように、右に倒した時に右に動くように設定したのだけど、つい逆に操作してしまう。なぜか、左に倒して右に行く操作が自然に感じた。指で画面を払うような感覚だ。スマートフォンを使うようになってから感覚が変わってしまったらしい。マウスホイールも画面を引っ張るスマホ式スクロールになっている。20年も経つと感覚は変わってしまうもんだな。 というわけで使い始めたんだけど、一つ、大きな問題に直面した。 ボールが引っ掛かってしまい、動かし始めにポインターが10ピクセル分ぐらい飛んでしまう。トラックボールってこんな感じだったっけと疑ってしまったが、ヨドバシカメラに行ってKensintonやLogitechのトラックボールを触ってみるとそんな引っかかりはない。このElecom製品の支持体の材質とボールのコーティングが私の部屋と相性が悪いのだろう。フッ素やシリコンオイルを吹くといい気がしたが、埃も嫌なので、艶消しボールを購入してみることにした。幸いなことにElecomのトラックボールは標準的なサイズのボールを使っているから互換品が買える。 ぺリックス 34 mm トラックボール 艶消し ざらつき加 工レッドコントロール型 PERIMICE-517/717/520/720またはロジクール/M575/M570/エレコムのトラックボールマウスと互換性有り マット仕上げ ボールがサリサリ鳴くようになったが使い心地は申し分ない。ピクセル単位でポインティングできる。これで20年ぶりぐらいのトラックボール復帰を果たした。 薬指の6ボタンはまだ迷っている。画面に軌跡を描くジェスチャーは面白いんだけど上手い使い方を思いつかない。しばらく、あれやこれやと考えてみることにしよう。

taiyolab.com · Taiyo Fujii, writing

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