マティスが硲伊之助に「どの国も自分の美を持っており最後はそれが勝つのです。日本の絵画の美はあなたにみずみずしい感性をよみがえらせ、別れたばかりのフランス絵画の美と同様、楽しい仕事をあなたにもたらすに違いありません」と手紙で書いているやつ、国=民族=人種の一体化が無自覚な前提になっていると疑っている。マティスがオリエンタリズムの画家だったのは偶然ではなくて、彼にフランス画家だという自覚があり、こういってよければ「人種的無意識」のようなものがあり、他者表象を弄するのはそういう無意識だとしか思えない。国に固有の美など近代ナショナリズムの幻想にすぎないけど(おそらく源流はロマン主義)、こういう物言いを日本の美術史家は見逃しつづけてきたどころか、たとえばピカソについて「カタルーニャ地方の血が云々」と書いてはばからない(この記述を見たのはだいぶ前で正確なことはわからないけどたぶん1970年代に書かれた文章だとおもう)。

とか思っていたら水声社から「女性・戦争・植民地 1919-1939 両大戦間期フランスの表象」という本がでており、大久保恭子さんの「アンリ・マティスとプリミティヴィスムの変容」という論考があるらしい。水声社かぁ...とおもったけど読まねばならぬ。 http://www.suiseisha.net/blog/?p=20790

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